『花の命は短くて苦しきことのみ多かりき』:林芙美子

花の命は短くて       
苦しきことのみ
       多かりき
林芙美子             
 
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海が見えた。海が見える。

五年振りに見る尾道の海はなつかしい。
汽車が尾道の海へさしかかると
煤けた小さい町の屋根が提灯のやうに拡がってくる。

赤い千光寺の塔が見える。山は爽やかな若葉だ。
緑色の海、向こうにドックの赤い船が
帆柱を空に突き刺している。
 
私は涙があふれてきた。