【グラム染色】(Wikipedia)

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[画像]グラム陽性球菌(黄色ブドウ球菌、紫)とグラム陰性桿菌(大腸菌、赤)のグラム染色


グラム染色(グラムせんしょく、英:Gram staining)とは、主として細菌類を色素によって染色する方法の一つで、細菌を分類する基準の一つ。デンマークの学者ハンス・グラムによって発明された。】

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https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%E6%9F%93%E8%89%B2

【概要】

グラム染色によって細菌類は大きく2種類に大別される。染色によって紫色に染まるものをグラム陽性、紫色に染まらず赤く見えるものをグラム陰性という。この染色性の違いは細胞壁の構造の違いによる。グラム陽性はペプチドグリカン層が厚く脂質が少ない細胞壁を持ち、グラム陰性はペプチドグリカン層が薄く脂質が多い細胞壁を持つ。そしてこの細胞壁の構造の違いは、この両者が生物学的に大きく違うことを反映しており、グラム染色は細菌を分類する上で重要な手法になっている。

グラム陰性菌は、その外膜が莢膜や粘液層で覆われた構造となっているものが多く、例外はあるものの、一般的な傾向としては相対的に病原性が高い。このような構造は細菌細胞の抗原を隠しカモフラージュするように働く。人間の免疫系は異物を抗原により認識するから、抗原が隠されると、侵入してきたものを人体が探知するのが難しくなる。莢膜の存在はしばしば病原菌の毒性を高める。さらに、グラム陰性菌は外膜にリポ多糖類である内毒素を持っているが、これが炎症を悪化させ、ひどい場合には敗血症性ショックを引き起こすこともある。

グラム陽性菌は一般的には相対的にそれほど危険ではない。これは人体がペプチドグリカンを持たず、従ってグラム陽性菌のペプチドグリカン層にダメージを与える酵素を作る能力を持っているからである。また、グラム陽性菌ペニシリンなどのβ-ラクタム系抗生物質に対する感受性が高いことが多い。なお、こういった傾向に対する例外としては結核菌やノカルジア菌などの放線菌・糸状菌などが知られている。

光学顕微鏡を使って細菌の形態を観察することは、細菌を同定するための第一歩である。しかし、スライドグラスに塗抹した細菌をそのまま観察しても細菌以外のものとの見分けが付きにくいため、通常は染色を施すことが多い。グラム染色は二種類の色素を使って染め分ける点では、一種類の色素によるもの(単染色)より複雑な染色法であるが、その操作自体は比較的容易であり、しかも細菌の大きさ、形状、配列に加えて、グラム染色性(=細胞壁構造の違い)の情報まで得られる。このため、細菌の鑑別の際にはまず最初に必ず行われる基本的な同定法である。