【戦国大名の「外交」;丸島和洋 】

【 #戦国大名 の「 #外交 」; #丸島和洋

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ふぁんどり氏のレヴューより『この叢書には珍しい、戦国大名研究の概説書です。』2013年9月21日

形式: 単行本(ソフトカバー)

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[以下引用]
 戦国大名家を一つの「国家」と見なす研究者による、戦国大名間外交を通じて見た大名権力の実態について考察した概説書です。


 本書では外交の場での文書様式などの形式、交渉ルート、協定のとりまとめられ方が詳細に記述され、豊臣秀吉の「惣無事令」に反して滅ぼされた小田原北条氏を例に、戦国大名外交の時代の終焉まで述べられています。文書については、大名の外交の場で頻繁に取り交わされていた「起請文(※1)」の実物が掲載されており、紙の種類から文書の様式、書状の畳み方の流行まで言及されています。


 著者が最も紙幅を割いて重点的に述べるのは、戦国大名家の外交官である「取次」についてです。主に甲斐武田氏の例を引き、実際の交渉は担当が固定された双方の取次同士で行われることや、取次は大名の側近と一族、宿老クラスの重臣がセットになっていることを指摘しています。

外交文書は、必ず大名の書状と取次の副状(そえじょう)の一セットでなければ正式なものではありませんでした。重臣の外交への参加が必須であったのは、文書の内容が家中の総意であることを担保するため、といいます。


著者は戦国大名専制君主とされていることに疑問を呈し、「戦国大名とは、一門・宿老という大身の支持によってはじめて、対外的な発言の正当性を保証された権力」としています。

 また、取次は相手大名家からも知行をあてがわれることがあるように、他家に深くコミットする(委ねる・身を任す)こともあり、それが最悪、自家での立場を失わせて亡命に至った石川一正のようなケースもあることが述べられています。

 戦国大名権力の実情にも迫る興味深い一冊です。

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(※1)きしょう‐もん〔キシヤウ‐〕【起▽請文】

神仏への誓いを記した文書。誓いの内容を記した前書(まえがき)の部分と、違背した場合に神仏の罰をこうむることを記して神名を列記した神文(しんもん)の部分とからなる。平安末期からあり、南北朝時代以後盛んになった。熊野神社などの牛王(ごおう)宝印の守り札の裏を利用することが多い。誓文。誓紙。起請。起請誓紙。