【口蹄疫】Yahoo!百科事典

口蹄疫(こうていえき)

[ 日本大百科全書小学館)]
 哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目に属する動物にのみ伝染するウイルス性の伝染病
 
 一度発生すると伝染力が強く、家畜法定伝染病に指定されている。ウシ、スイギュウ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダトナカイなどの、口や蹄部(ひづめ)の皮膚、粘膜水疱(すいほう)を形成し、急速に広がる。感染率や発病率は高い。致死率は一般には低いが、幼畜では高い場合が多い。
 
 伝播(でんぱ)は接触および空気により、ウイルスは病変部に濃厚に存在し、形成された水疱が破れると床や畜舎を汚染し、唾液(だえき)や呼気から飛散し、牛乳中や精液などにもウイルスが混在している。アジアアフリカ南アメリカにはいずれも常在しており、ウイルスが存在している国からのウイルス侵入の阻止が重要である。
 
 2000年(平成12)、92年ぶりに日本での発生がみられた。ただし、鼻腔内の病変のみで、蹄(ひづめ)の局所に異常はなく、抗体によって感染が確認された。口蹄疫と診断された場合には、特定家畜伝染病防疫指針に基づき、初発農場から半径5~30キロメートルの範囲内で生体の搬出を制限、交通遮断、疑似患畜(発生のおそれのある家畜)を含め全頭殺処分、埋却および消毒処置を行い、蔓延(まんえん)を防止する。
 
 日本は国際獣疫事務局(OIE)により、ワクチン接種をしない「口蹄疫清浄国」として認定されている。口蹄疫の常在国での予防には、数種の型を混合した多価ワクチンの接種が必要で、年2回の注射が行われる。
 
[ 執筆者:本好茂一 ]
 
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