【伝染病予防法】Yahoo!百科事典より引用

伝染病予防法(でんせんびょうよぼうほう)

 伝染性が激しく、しかも生命に危険をもたらすおそれのある伝染病を指定し、その予防対策をたてて国民を伝染病から守るために制定された法律。
 
 1897年(明治30)施行以来、国内に非常在性の伝染病の国内侵入後および常在性の主要な伝染病の伝播(でんぱ)予防を目的とする種々の法律の中核となった。
 
 しかし、予防対策や治療法、および衛生思想の普及が不十分な時代に制定された法律であり、感染者の隔離や感染地域の交通遮断、集会の禁止、強制消毒など、時代にあわない内容となったため、1999年(平成11)廃止、かわって感染症予防・医療法感染症法、平成10年法律114号)が施行された。
 

1. 内容

 伝染病予防法には、後述の11種の法定伝染病をはじめ、厚生大臣(当時)が指定し、この法律が適用される指定伝染病2種と届出(とどけいで)伝染病13種が明示され、隔離、治療、消毒、予防接種などの諸規定、予防上必要とされる市街村落全部の交通遮断、諸集会の禁止を含む諸措置、および医師の届出義務、検疫、費用、罰則などが定められていた。
 
 法定伝染病は同法第1条に明記され、全面的に同法が適用された。これ以外にも同法の適用を必要とする伝染病があるときは、厚生大臣が指定することになっており、指定伝染病とよばれ、1959年(昭和34)に急性灰白髄炎ポリオ)、76年にはラッサ熱が指定された。
 
 届出伝染病インフルエンザ狂犬病炭疽(たんそ)、伝染性下痢症百日咳(ひゃくにちぜき)、麻疹(ましん)、急性灰白髄炎(ポリオ)、破傷風マラリア黄熱回帰熱フィラリア症、つつが虫病の13種で、これらの病気を診断した医師は24時間以内に保健所長に届出をすることが義務づけられていた。

2. 沿革

 伝染病の予防対策として最初に法制化されたのは種痘であり、続いて痘瘡(とうそう)(天然痘)やコレラの流行に応じて個々の予防法規がつくられたが、1880年になって総合的な伝染病予防規則が制定された。
 これによる対象疾患は、コレラ腸チフス赤痢ジフテリア、発疹(はっしん)チフス、痘瘡の6種が中心となっていた。
 
 数回改正されたのち、これにかわって1897年に制定された伝染病予防法では、しょうこう熱とペストを加えた8種が対象疾患であった。
 
 伝染病予防法はその後、1922年(大正11)の改正でパラチフスと流行性脳脊髄(せきずい)膜炎が加えられたほか、コレラおよびペストの疑似症も対象とされ、伝染病の病原体保有者(保菌者)も患者と同様に扱われることになった。
 さらに1954年(昭和29)の改正によって日本脳炎が加えられ、法定伝染病は11種となった。
 
 1999年の伝染病予防法廃止、感染症予防・医療法施行により、法定伝染病指定伝染病届出伝染病の分類は使用されなくなり、かわって、新感染症、1~5類感染症、指定感染症に分類された。
[ 執筆者:柳下徳雄 ]