【統制経済(とうせいけいざい) 】

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統制経済(とうせいけいざい)

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controlled economy
 一国の経済活動に国家が統制・干渉を行う経済体制をいう。社会主義計画経済をも含める場合もあるが、通常は資本主義体制の枠内で行われるものをさす。後者でもさらに、間接的な関税補助金租税などのほか、通貨、金融、貿易、外国為替(かわせ)などの管理や経済計画策定などによって経済を誘導する場合をも含める場合と、物資の配給制公定価格制、業種別の企業整備などの直接的・強制的規制の場合のみをさす場合とがあるが、後者に限定するのが通説である。
 
 統制経済という語が用いられるようになったのは、1930年代の大恐慌以降で、失業、生産縮小、物価暴落、社会不安増大のなかで資本主義を救うための措置が、統制経済という形をとったからである。それはアメリカのニューディール政策にみられるような経済・社会改革による景気回復を目ざす統制と、日本やドイツのような軍国主義化、戦時経済化を目ざす統制に分かれた。
 
 わが国では日中戦争中の1938年(昭和13)の「物品販売価格取締規則」による価格統制に始まり、39年の「国家総動員法」を基本法とし、太平洋戦争に入って42年の「企業整備令」による中小企業の強権的整備統合などの段階を経て、各種の営団統制会などが設けられ、公定価格、物資・労働力の割当て制などが強力に遂行された。
 
 第二次世界大戦後は、石油ショック(1973)による世界的インフレ不況のなかで、先進諸国において一時的に統制的経済運営が行われたことはあったが、統制経済復帰への傾向はまったくみられない。
[ 執筆者:一杉哲也 ]