【通貨バスケット】中国・アジアの金融利点

[経済]
【通貨バスケット】
中国・アジアの金融利点
 
 
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【通貨バスケット】
(つうかばすけっと)currency basket
 
 複数の通貨を加重平均(※1)してつくられた安定的な通貨単位のこと。
 
 それに自国通貨の為替(かわせ)相場を連動させる制度を、通貨バスケット制あるいは通貨バスケット・ペッグ制(ペッグとは固定、連動などを意味する)という。
 
 通貨の機能の一つである「計算単位」として、できるだけ安定的な単位にするために、国際金融、国際通貨においては、いくつかの通貨を加重平均した複合的な国際通貨単位を作成した。主要先進国通貨が変動為替相場制の今日では、複数の通貨からなる通貨バスケットが、より安定的と期待されたからである。
 実際には、ドルやユーロと同じように、ある国においては自国通貨の為替政策の基準通貨として採用され、外国為替相場制度の一つとなっているし、一部では国際資本取引の建値(表示通貨)として使用されている。
 
 これまでの通貨バスケットとして有名なのは、国際通貨基金IMF)のSDR特別引出権とヨーロッパ共同体(EC)におけるヨーロッパ通貨制度(EMS)で創出されたヨーロッパ通貨単位(ECUであろう。
 
 SDRは1969年に創設された新たな国際準備資産であるが、変動為替相場制移行後は、主要国通貨(2009年現在は、ドル、ユーロ、円、ポンドの4通貨)の加重平均の通貨バスケットとなっている。
 IMF加盟国のなかには、実際にドルやユーロという1国の通貨への固定ではなく、SDRペッグ制を採用している国もある。
 
 また、1979年にECが採用したEMSにおいては、加盟国通貨の加重平均からなるECUという通貨バスケットが創出され、各国はこれとの間に中心レートを設定することにより、加盟国間の通貨の固定化を図った。
 
 しかし、もっとも通貨バスケットの効果が注目を浴びたのは、アジア通貨危機の経験によってである。
 
 アジア各国は、単にアメリカだけでなく、日本やEUとも密接な経済依存関係を有しているにもかかわらず、実質ドル・ペッグ制を採用してきた。
 そうしたなかでの1995年以降のドル独歩高が、アジア各国通貨を円やユーロに対して上昇させ(実効為替相場の上昇)、輸出減退、貿易・経常収支悪化を招き、アジアへの信認後退から外資の逆流、通貨暴落につながったといわれている。
 このため、アジアのような多様な国際経済関係をもつ国は、その重要度をウェートにして通貨バスケットを組成し、それに対してペッグ、ないしは管理する為替政策が望ましいとの議論が高まっている。
 
 これは、バスケットのなかの個々の主要通貨に対しては、一定程度伸縮的になるため、厳格な固定為替相場制と完全な自由変動為替相場制の中間にあるという意味で、中間的為替相場の代表的制度と位置づけられるからである。
 
 たとえば、タイがドル50%、円50%の通貨バスケットにバーツをペッグする制度を導入したとして、いま円・ドル相場が変動し、円に対してドルが10%上昇したとすると、バーツはちょうどその中間に位置することになる。したがって、ドルに対しては5%下落し、対米輸出は増加するが、円に対しては5%上昇するため、対日輸出は減少し、結局タイの対外経済関係は安定性を維持できるという仕組みである。
 
 こうした利点への認識は高まっているが、シンガポールなど一部の国で採用されているのみで、本格的な実現には至っていない。
[ 執筆者:中條誠一 ]