【もんじゅは、兵器級プルトニウムを62kg生産し”た”か?(その2)】

[転載]
62kg生産し”た”か?(その2)
 
 
2006/12/16
もんじゅは、兵器級プルトニウムを62kg生産した」か?
(その2)
 
◇ ◆ ◇

多いか、少ないか?
もんじゅの運転時間は4395時間
4385時間÷24時間=約183日。
ほぼ半年。
 
下のグラフは、2006年8月31日に開催された第30回福井県原子力安全専門委員会資料No.3「高速増殖炉研究開発センター高速増殖原型炉もんじゅ初装荷燃料の変更計画について」から切り抜いたものです。
イメージ 1
↑[図1]「核燃やめて おいしいごはん氏」が切り取った「もんじゅの運転実績」。
 
[月臣コメント]
どういう意図かは不明だが、「核燃やめて おいしいごはん氏(仮称)」は、もとのグラフ(↓[図2])のこの部分(↑[図1])だけを切り取って「運転時間は4395時間(ほぼ半年)」としている。
 
(もっとも、月臣のこのツッコミが極めて瑣末な事柄であることは、Wikipedia「もんじゅ」の記事を読めば分かることではあるのだが・・・。)
 
イメージ 3
↑無修正
このままだと少し分かりづらいので、色づけ(ブロック分け)してみた。
(↓[図3:月臣による補追])
 
 
「もとのグラフ」をみると、「原子炉運転時間(4395時間:約半年)」と、「初臨界日時(1994年4月)」と、「初併入(原子炉と発電機を両方ONにする)日時(1995年8月)」と、「ナトリウム漏えい事故(1995年12月)」のタイミングが合わない。
 
 
↓[図3]
イメージ 2
「原子炉運転時間」とは何か???
「初臨界」から「事故」までの間に「発電した時間」か???
「核加熱試験」から「事故」までの間に「発電した時間」か???
(繰り返しになるが、月臣のこのツッコミが極めて瑣末な事柄であることは、Wikipedia「もんじゅ」の記事を読めば分かることである。)
 
◇ ◆ ◇
 
何はともあれ、「核燃やめて おいしいごはん氏」の記事には、 「日本の核開発の性質」について考えるための大切な部分もあるので、続きを読んでみよう。
 
◇ ◆ ◇
 
1994年 4月 5日 初臨界
1995年 8月29日 初発電(電気出力5%、熱出力40%)
1995年12月 8日 
40%(電気)出力試験のため原子炉出力を上昇中、2次主冷却系配管の温度計部からナトリウム漏えい火災事故が発生し、現在(2006年12月16日当時)まで“停止中”。
 
 
 
ナトリウムの融点は約98度C。
もんじゅは“停止中”でも、ナトリウムが固まらないよう、電気で熱し続けてきました。

  もんじゅでつくった電気はこれまでどれだけなの?
  もんじゅでつかった電気はこれまでどれだけなの?
 
(月臣補注:「もんじゅで作られた”兵器級プルトニウムはどれだけなの?」と言う方が、この文章の趣旨に合っているのではないか???)
 
 
もんじゅは高速“増殖”炉の原型炉。

”増殖”とは、燃え残った(未分裂の)プルトニウム新しくできた中性子がブランケットのウランに吸収されることで変化した)プルトニウムの合計が、燃料として装荷したプルトニウムより多くなったら”増殖”です。
 
 ここで問題にするのは、新しくできたプルトニウム

 おもに、半径方向のブランケット燃料中の劣化ウラン(ウラン238)が中性子を取り込み、プルトニウム239が生成することでプルトニウムが新しくできるのですが、核分裂性のプルトニウムの比率がきわめて高く、”兵器級プルトニウム”に分類されます。
 
 2006年12月9日、「’06もんじゅ廃炉へ!全国集会」で配られたチラシ「核開発を憂慮する会(準)」に、
 
もんじゅは、兵器級プルトニウムを62kg生産した
 
とありましたが、私はこの数字を信じることができません。
もんじゅの「理論能力」から無理ということではなく、 『生産した』 と過去形で書かれているから です。
 
 チラシでは、「核開発に反対する物理研究者の会」の資料請求に対する1994年11月4日の旧動燃FAX回答を「62kg生産した」根拠にしています。
 また参照として「核開発に反対する物理研究者の会通信第5号(1994年12月号) 」を示していますが、私はこの通信を発行当時に読み、「やっともんじゅについても半径方向ブランケットで生成されるプルトニウムの量と内訳を公表したか」と感慨深く思った記憶があります。
 
 感慨深く思ったのは、この当時、グリーンピース・インターナショナル「不法なプルトニウム同盟」という論文を発表し、もんじゅより早く運転していた実験炉「常陽」(茨城県大洗町)のブランケット燃料中の兵器級プルトニウムの問題がクローズアップされ、これを分離するための再処理施設を茨城県東海村の旧動燃の再処理工場に隣接して建設するという計画がいよいよ本格化してきたからです。

 常陽ではどれだけ兵器級のプルトニウムが生成されたかは、アメリカの研究所などには情報が届いており、それをグリーンピースなどが公表したのでわかっていました。
 
 通信を読み、もんじゅの62kgとは理論値で、「もんじゅが本格運転を開始したら1年間で生成するプルトニウムの量だろう」と考えていました。

 旧動燃のFAX回答当時(1994年12月当時)、もんじゅは電気出力0%。熱出力(原子炉の出力)もまだまだ低い水準であったはずですし、そもそも初めての発電は翌年8月。グラフのようにその後何度か電気出力40%程度の運転を行いましたが、100%に達することもなく12月8日を迎え、本格運転をしないまま今日に至っています。
 
イメージ 4
 
下のグラフ中の面積比から電気出力での稼働率をはじき出しても、5%には届かないでしょう。
 
イメージ 5
 
タービンにつなげない試験での延べ稼働率はこれより多いわけですが、10%に届くとは考えにくいと思います。
(そもそも、いくら原子炉が発熱していようと、「タービン(蒸気式発電機)」につながなければ「電気出力」はゼロのはず。)
 
わたしはチラシで言う「62kg生産し”た”」は正しくなく、
 
もんじゅが本格運転をはじめたら年間62kgの兵器級プルトニウムを生産することを旧動燃は認めていた
 
と説明するべきと思いました。
 
◇ ◆ ◇
[月臣コメント]
 
 
・短期間とは言え、40%の出力で”兵器級プルトニウム”は何kg生産できたのか??
 
・そもそも、「常陽」では既に22kg(プルトニウム核兵器約8~9発分)生産完了しているのではないのか??
 
・その兵器級プルトニウムは、兵器として使うために保存しているのか??
 
・それとも、プルサーマルなどによって民生用として使うために準備しているのか???
 
◇ ◆ ◇
 
イメージ 6
↑「jaea060831fukui_pref-03.pdf」をダウンロード
 
 
 
グリーンピース・レポート「不法なプルトニウム同盟」については次をご参考に。
 
投稿日 2006/12/16
高速「増殖」炉問題
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