【急いで行う仕事には後悔が伴う】2011-0722

[転載:イスラムの仕事哲学]
【急いで行う仕事には後悔が伴う】
2011-0722
 
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 親愛なる兄弟姉妹の皆様。「人間の祈りは幸福のためであるべきなのに、かれは災厄のために祈る。およそ人間はいつも性急である。」(夜の旅章第11節)とおっしゃるアッラーは、私たちの弱点の一つが【性急さ】であると告げておられます。
 そもそも誰が災いを求めるでしょうか?この章句は人間の重要な心理的側面を示すものです。実際人間は腹が立った時、苦しんだ時、あるいは困難に直面した時に呪いの言葉を吐き、困難から救われるために我慢強く忍耐し、努力する代わりに性急さに走り、すぐに救われようとします。それができないと、失望や悲観といった精神状態のうちに「アッラーよ、私の命を取り上げてください。私をこの苦しみから救ってください」といった言葉でドゥアー(du'a: 「お祈り」)をします。しかし困難な出来事を前に感情に囚われ、十分に考えることなく忍耐なしに振舞うことは、しばしば本人にとってよくない結果を招きます。さらには、修復が困難な害をもたらすこともあります。
 
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 親愛なる兄弟姉妹の皆様。歴史上最も偉大な法学者の一人であるイマーム・シャーフィーが、ある裁判所の判事に任命された弟子に行なった次の提言は非常に意味深いものです。
 
「わが弟子よ、あなたの元に誰かが、”誰それが私の目の片方を傷つけて見えなくした” と訴えに来たとしたら、決して性急に判断を下してはいけない。よく調べなさい。もしかしたら(訴えてきた)その人は、相手の目を二つとも見えなくしたのかもしれない。」
 
 親愛なる兄弟姉妹の皆様。人が性急に振る舞い、拙速な行動をとることは、個人生活だけでなく、集団生活においても害を及ぼすものです。人々の間の喧嘩や憎しみはたいがい、性急で十分な考えの伴わない、あるいは思い込みによるものではないでしょうか?その危険性を指摘されるアッラーは次のように命じられました。「信仰する者よ、もし邪(よこしま)な者がひとつの情報をあなたがたにもたらしたならば、慎重に検討しなさい。これはあなたがたが、気付かないうちに人々に危害を及ぼし、その行ないを後悔することにならないためである。」(部屋章第6節)
 
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 親愛なるムスリムの皆様クルアーンとスンナの導きのもと、性急さをコントロールすることができれば、間違いなく、よい結果がもたらされるでしょう。私たちの教えでは、次のようなことをすみやかに行なうことが推奨されています。お客に食事を振舞うこと、罪を犯したならば悔悟すること、礼拝を時間通りに行なうこと、成長すれば結婚すること、約束の期日までに借金を払うことなどが求められています。
 あらゆる点において私たちに害を及ぼしうる性急さを克服するためには、理性や経験を用いましょう。真実を十分に調べましょう。他者に相談し、先を見越し、忍耐と思慮深さをもって行動しましょう。アッラーが仕事を性急さによってではなく、思慮深さと熟慮に満ちた振る舞いで、最良の形で行なうしもべとしてくださいますように。
 
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[用語]
シャーフィイー【al-Shafi`i】
[767~820]イスラム法学者スンニー派四法学派の一であるシャーフィイー派の祖。古典イスラム法理論の大成者。
 
 
 
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[関連ページ]
NHK高校講座ライブラリ(再放送)
;地理(2011年4月深夜放送)
 
 
第22回 世界の諸地域を学ぶ
イスラーム世界
講師
同志社大学大学院教授
 内藤 正典
 
 
 
 十数億人の信徒を持つイスラームは、信仰だけでなく日常の社会生活の規範という側面も持つ巨大な宗教文明である。イスラームの主な特徴、イスラーム社会はどのような価値観で動いているのか、イスラーム圏全体としての統一性と、国や地域ごとの多様性を学ぶ。