【二つの祖国】と原爆

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[中巻P.213より引用]

『ナギコは、死んだかも知れない。---、ワシントン・ポストに載っている不気味なキノコ雲を見て、チャーリーは頭を抱え込んだ。今まで広島に空襲が殆どないのは、アメリカへの移民者が多く、日系語学兵にも広島出身者が多いため、米上層部に何らかの配慮があるのだと、ATISではもっともらしく噂されていたが、とんだお笑い草であった。無傷同然に温存しておいたのは、原子爆弾の威力を計るための配慮がなされていたからにすぎなかった。』

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「二つの祖国」は山崎豊子の小説である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E3%81%A4%E3%81%AE%E7%A5%96%E5%9B%BD

主人公:天羽賢治(あもうけんじ)は、天羽乙七の子。
実在の人物:伊丹明氏などをモデルとする架空の日系二世である。

賢治の父:天羽乙七は鹿児島の郷士の七男として生まれ、アメリカに移民した。
はじめの10年は農業を営み、厳しい環境下で働いて貯めた金を元手に同県人の営むクリーニング店を引き継いだ。働きづめに働く乙七の生きがいは唯一、為替レートの差で息子たちに日本の大学を卒業させることだけであった。

戦争が進むにつれ、賢治と周囲の人々はそれぞれの立場から、様々な事態へと巻き込まれてゆく。

次男:忠は、賢治より後に日本に渡ってから太平洋戦争に遭遇して帝国陸軍に入り、戦場で兄:賢治と遭遇。

三男:勇は、強制収容所の生活の中で米国民としてのアイデンティティを証明するため、日系人部隊に志願して戦死。

そして、賢治の勤める新聞社「加州新報」の同僚:井本梛子(いもとなぎこ)は、戦時交換船で広島に帰り、被爆する。


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[7&Yでの月臣の記事]

太平洋戦争以前から、日本人移民は「ジャップ」と呼ばれ、蔑まれてきた。戦争が始まり、彼らは住み慣れたリトル・トーキョーを追われ、強制収容所で人間以下の扱いを受ける。移民一世・二世、また、就学等のため一時日本に帰国した層など、さまざまな立場から、太平洋戦争と、そこに関わる人々の日常や苦楽が綴られてゆく。